
はじめに
今回分析するのはMr.Childrenの超名曲「終わりなき旅」です。
ミスチルのファンで有名なサッカーの長谷部誠選手、香川真司選手メジャーリーグで活躍するイチロー選手なども、終わりなき旅には特に思い入れがあるようです。前向きで背中を押してくれるような歌詞も、その人気の一端でしょう。
常に挑戦をし続けるアスリートの心に響くのもよく分かります。
歌詞抜きで見ても、終わりなき旅には作曲の参考にしたいおいしいエッセンスがたくさん詰まってます。
一度には紹介しきれないので、曲のセクションごとに数回に分けて書いていきますね。
今回はイントロ編です。
イントロのコード進行
エレキギターのコード弾きから始まるイントロのコード進行は以下のとおりです。
Key=F#
F#→Bm/F#→F#→Bm/F#→Bm/E→Bm/D→Bm/E→
F#→C#/F→D#m→F#/C#→B→B/C#→B
最初のF#→Bm/F#からいきなり独特の雰囲気がありますね。
Bm/F#は分数コードで、Bmのコード+ルート(一番低い音)としてF#を鳴らします。
オンコードとも呼ばれていて、Bm on F#などと表記されたりもしますね。
これはギターでも鍵盤楽器でも弾きやすいコードチェンジです。
サブドミナントマイナー
このF#→Bm/F#という進行。
暗い気持ちになりそうな雰囲気ですが、どことなくエキゾチックにも聴こえませんか?
ここが今回最初のポイントです。
まず、イントロ部分のキーであるF#のダイアトニックコードを見てみましょう。
F#のダイアトニックコード (3和音)
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵ | Ⅶ |
F# | G#m | A#m | B | C# | D#m | Fm(b5) |
基本的に、ダイアトニックコードにあるコードだけを使ってコード進行を作ると耳なじみがよくて安定感が出てきます。
それでは「終わりなき旅」の出だしのF#→Bm/F#はどうでしょうか?
BmというコードはF#のダイアトニックコードにはありませんよね。
しかし、mのついていないBはあります。
では試しにF#→Bを弾いてみると、明るくて素直な響くコード進行です。
ダイアトニックコード的に言えば、本来はこれが素直な使い方なのです。
でもそれじゃ普通過ぎて面白くない。
そこでmを付けて B#m、つまり同じB#だけどマイナーコードにしてしまうワケです。
B#mはF#のダイアトニックにないコードで、B#mを含んでいる他のキーのダイアトニックコードから借りてきたコードという位置付けになります。
(音楽理論的には同主調変換という理論になります)。
上の図のように、BのコードははキーであるF#から4番目(Ⅳ)にあたります
キーがメジャーである場合、ダイアトニックコードの4番目のコードは必ずメジャーキーです。
例)
Key=Cの場合も、ⅣはFというメジャーコード。
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵ | Ⅶ |
C | Dm | Em | F | G | Am | Bm(b5) |
F#のキーの話に戻ります。
通常はB (Ⅳ)のコードに進行するのが無難なのに、Bm (Ⅳm)にしてしまう。
このテクニックを俗に「サブドミナントマイナー」と呼びます。
分数コード(オンコード)
サブドミナントマイナーにするだけであればF#→Bmだけでいいのですが、「終わりなき旅」ではもう一捻りしてあります。
もう一度ご覧ください。
F#→Bm/F#
Bmの後ろに/F#がついてますね。
これは最初にも説明したとおり、分数コード、またはオンコードと呼ばれるものです。
通常、BやBmといったコードはBがルートとなる音なので、和音の一番低い音にBの音を持ってくるのが普通なのですが、意図的にB以外の音を持ってくることで、複雑な響きが演出できます。
Bm/F#というコードは、Bmを構成する音のひとつであるF#をルートに持ってきた形ですね。
普通はこのようにBの音をルートにするが、
「終わりなき旅」イントロではF#をルートに据えている