大人が観ても泣けると評判の高い「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」を観てみました。

僕は映画版のクレヨンしんちゃんはもとより、TVシリーズ版もほとんど観たことがなく、つまりクレヨンしんちゃんに思い入れがない状態での鑑賞です。

なので、特に贔屓することなく、一般の映画と同列に評価できるはず。

繰り返し2回観た上での感想を書いていこうと思います。

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あらすじ

春日部で平和に暮らしていたしんのすけが何故か突然戦国時代へとタイムスリップしてしまう。そこでひょんなことから、歴史上討たれるはずだった侍を救ってしまう。歴史を変えてしまうわけだが、そんなことはどこ吹く風とばかりに、しんのすけは政略結婚に巻き込まれたり、戦で戦ったり、と戦国時代でも大暴れ。  そして、後から何とか車で(?)追っかけてきたひろし達とも再会をするものの、歴史の荒波は一家を大きく変えていく・・・  果たしてしんのすけ達はどうなってしまうのか?  そして、変えられてしまった歴史はどうなるのか?

大人も感動できるが、やはり子ども向け(良い意味で)

本作「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」をレビューを観ると、「大人も泣ける」「むしろ大人向けのアニメ」みたいな評判が多いですね。

確かに小さな子どもに受けるようなギャグ要素は少ないし、ある程度の年齢にならないと理解できないような部分もあるのかなとは思います。

かといって本作が大人向けかと言われると、大人にとっては物足りなさを感じるのは事実。

複雑な要素を排した解りやすいシンプルなストーリーという点では、やはり子どもを対象とした作りになっています(クレヨンしんちゃんなので当たり前ですが)。

ではなぜ、大人も泣けるアニメと評されるのか?

正直言って、僕はこの映画を観て泣くことはありませんでした。

というのも、クライマックスのあの展開は特に珍しいものではなく、様々な映画や小説などで使い古されている、ある種の古典的物語だからです。

つまり「ああ、このパターンね」と分かってしまい、驚きが少ない。

とはいえ、クライマックスに至るまでに紡がれる又兵衛、簾姫、野原一家の関係性を踏まえると、大人でも少なからず心を動かされます。

なので、パターンを知らない、あるいはパターン耐性が無い人が観ると、その衝撃と相まって感動が何倍にも膨れ上がることは間違いありません。

そういう意味では子ども向け。

しっかりとした自我はありつつ、まだ世の中をあまり知らない多感な時期に観れば、後々まで心の片隅に大きな印象を残す作品になるでしょう。

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「死者とともに生きている」という哲学的メッセージ

この映画が特別な評価を受けているのは、哲学的メッセージがあるからだと思います。

哲学的メッセージといっても「人間とはこういうものだ!」みたいな、上から目線の押し付けがましいものではなく、感覚的にフワッと感じ取らせてくれる柔らかさがあるため、観ている方に抵抗なくスッと入ってくる。

本作が発信しているメッセージを端的に言うと、「過去に生きた先祖の英知に目を向けよう」ということでしょうか。

制作側の意図がそこにあるのかどうかは知りませんが、少なくとも僕はそう受け取りました。

「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」のストーリーは表面的に見れば、「戦国時代にタイプスリップした野原家が、弱小藩を滅亡から救う」という構図です。

しかしもっと大きな視点で見ると、あの時代の武士道的な精神が脈々と受け継がれてきたからこそ、今の日本があるとも言えるわけです。

別の言い方をすれば、先祖の英知の積み重ねが、今の(それなりに)豊かな日本を作ってきた。

過去の英知とは、より良い日本を作るために奔走してきた人々の歴史でもあります。

つまり、過去の英知を無視してより良い未来は作れないわけです。

しかし現代はどうでしょうか?

すべてを「アリ」か「ナシ」か、「右」か「左」か、「善」か「悪」かで判断し、行動に結びつけていくような時代の空気感がありますよね。

これは全てが0か1で表されるようなコンピュータ的な思考と同じではないでしょうか?

人間って本来そんな単純なものではなくて、もっと複雑な生き物です。

複雑であるからこそ、過去に生きた人々は考えを積み重ねてきたわけだし、その人たちが作ってきた歴史と英知を無視して良いはずがありません。

「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」を観ると、過去と現在のつながりを強く感じさせてくれます。

エンディング近くで春日家の姫である「廉ちゃん」が野原一家にかける「これからも私はこの場所に通い、そなた達のことを思う」というセリフ、現代に戻ったしんのすけが空に浮かぶ雲を見て「おじさんの旗だ!」、最後の最後に廉ちゃんが空を見上げながらつぶやく「おい、青空侍」。

これらのシーンにこの作品のメッセージが集約されていると思います。

過去の人々が考えてきたことや体験したことは、今を生きる僕たちの中に生きていて、決して無の存在ではない。

もっといえば、僕たちは死者とともに生きている。

この概念は、有名な哲学者であるオルテガが言うところの「生きている死者」にも繋がってきますし、現代のポピュリズム問題を考えるきっかけにもなります。

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時代考証がしっかりしている

僕自身は全然詳しくないのですが、本作は合戦シーンなどがしっかりとした時代考証に基づいて描かれているそうです。

確かに、素人から見ても本格感は伝わってきますね。

登場するキャラも立っており、アニメではありながら本格的な大河ドラマ、時代劇としても楽しむことができます。

2002年の作品なので、単純に今のアニメの絵のクオリティと比べるとどうしても見劣りがしてしまうのですが、作品に込められた強いエネルギーを前にすると、絵そのもののクオリティはまったく気になりません。

例えるなら、50年代60年代の古い機材で録音された音楽も、曲が良ければ今でも十分通用するのと同じですね。

本質的に価値ある良い作品は、時代に淘汰されません。

最後に

今回、クレヨンしんちゃんそのものにもあまり知識がない状態で鑑賞しましたが、素直に良い作品だと感じました。

大人にとっては物足りなさがあるかもしれませんが、アニメ映画の名作として異論のある人は少ないかなと。

先に紹介した哲学的メッセージも感じ取ることができる作品なので、もしかするとより良き人格形成にも重要な影響を与えてくれるかもしれません。

なので、10代までには1度観ておくべき映画かなと思います。

単純に娯楽作品としても面白いですしね。